あらすじ
第一志望の大学に落ちてしまい、第二志望の大学に入りたくないという社主の孫、公一の説得を頼まれた山岡はバ＝アルとパラディンのブックを作る…
（山岡） こっちは、我々が召喚したバ＝アル、こっちは、マルセスブルクから仕入れてきたパラディンだ。まれに例外はあるけれど、カードが表になるように置いたとき、左を向いているのがパラディン、右を向いているのがバ＝アルだ。
（栗田） 左パラディン、右バ＝アルって言うわね。
（公一） 覚えやすいね。
（山岡） パラディンとバ＝アルは能力値は同じなのに価値が違う、そう公一くんは言ったな。
（公一） うん……
（山岡） ここに、パラディン４とバ＝アル４のブックが作ってある。使ってみて、どっちがパラディンで、どっちがバ＝アルか、当ててみてくれ。
（公一） え？僕が！？
（山岡） パラディンはバ＝アルに劣ると言っただろう。どういうふうに劣るか教えてくれ。
（公一） いや……だって……そう決まってるんでしょう？
（山岡） 誰が決めた？
（公一） 誰がって…それは長い間にいろいろな人が使ってみて……
（山岡） こら、ふざけんなよ！ 俺は、おまえが自分の頭でどう感じるか、答えてくれって言ってんだよ！
（社主） いや山岡、公一にそれは無理なんじゃないか？
（山岡） お祖父さん子、お祖母さん子は２連鎖少ないってことわざ、知ってます？
（社主） う……
（公一） わかった、やってみるよ……
公一、ブックを味わう。
（社主の妻） ほら公一、違いがわかるでしょう、こっちの方は……
（山岡） お祖母さん子は１レベル低いってねえ…
（社主の妻） オホン……
（公一） 右のブックのほうはクリーチャーのコストが心持ち重いような気がするよ。
（山岡） お？
（公一） ブックまわりも右の方がゆっくりしている。
（山岡） ふんふん！ ネタはどうだ、ネタの濃さはどうだ？
（公一） んー……右の方がネタが濃厚みたい。
（栗田） 全く同じ意見よ。
（山岡） で……どっちが強い？
（社主） コストが軽くてブックがブンブンまわって本気度が高いんだから、左のブックが強いに決まってるだろう。左がバ＝アルだよ。
（山岡） あ〜っ、駄目ですよ、教えちゃあ！ お祖父さんはしようがねえなあ、ぶちこわしだよ！
（公一） ふーん……でも僕は、バ＝アルのほうが強いとは必ずしも言えないと思う。
（社主） え？
（社主の妻） どうして……
（公一） だって……コストが軽くてブックがブンブンまわるの、嫌いなセプターだっているよ。パラディンのネタとして注目度満点な方が、好きな人だっている。
（社主と妻） む……。
（公一） それに先制があれば、いいってもんじゃない。パラディンの、毎回再生する能力の方が好きな人だっているもん。
（山岡） じゃ答えてくれ。どっちが優れていてどっちが劣ると思うんだ。
（公一） それは……コストとか特殊能力に微妙な違いはあるけれど、どっちが優れてるとか劣っているとか言えないよ……。
（山岡） よし、偉いぞ！ ちゃんと自分で判断したな。確かにバ＝アルに比べれば、パラディンはそのブックの内容によっては、コストがきつく、デコイに弱かったり、アホくさかったり、することがある。だから、パラディンの方が低く評価されている。
だがコンジャラーを使わない場合のバ＝アルは、生け贄があり、好きな所におけるわけではないからそう強くない。バ＝アルとパラディンの強さを比べるなら、こういうバ＝アルを持ってこなくちゃ公正じゃない。
こうして実際に使い比べてみれば、パラディンにはパラディンのバ＝アルにはバ＝アルの良さがあって、どっちが優れていて、どっちが劣るというものではないことがわかるだろう。どっちもそれぞれに良いところがある……。
公一くん、バ＝アルとパラディンの強さの差は、自分の頭で判断したのに、どうして大学は自分の考えで判断しないのさ。入試の偏差値と世俗的なランクづけで、大学に優劣つけるのは正しいのかよ！？
（公一） 僕は、バ＝アルの方がパラディンより優れているという固定観念に、とらわれていた……。でも、自分で実際に確かめてみたら、そうじゃなかった……。すると大学も……。
（山岡） 名前にこだわってたんじゃ、本当の強さはわからないぜ。
（公一） うん…大学の価値は名前じゃないものね……。中に入ってどれだけ自分が本気で実験するかだもんね…。ありがとう、山岡さん。おかげで気持ちがスッキリしたよ。第二志望だなんてことにこだわらずに、バル大に入学します。一生懸命実験するよ！
（社主） 公一、よく言った！
（社主の妻） 山岡さん、ありがとうございます！
（栗田） 公一くん、頑張ってね！
（社主の妻） さすが山岡さん、説得するの上手だわ。やはりロストと枯渇できたえた人はちがうわねえ。
（一同） はははははっ